河野との馴れ初め②
食を乞うnoteにございます…へへへ…
何とまぁ、書いてみて気付いたんですが
河野との出会いを時系列で語りますと
これがまぁ長ぉございまして…へへへ…
二部構成となりやした
(だもんで、消費税分くらい値上げしました)
本来なら三部くらいになるんですがね
あまりに長いのも需要ないやろうし
その他に書きたいこともありますし
今、現在は脚本の執筆中でして
こればっかりに注力するのも問題ですし寿司鮨
では、河野との馴れ初め京都大火編です
前回お話した、僕の大恋愛スペクタクルファンタジーがありまして
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よし、釣れた釣れた
違うよ
大阪王将に呼ばれたんだよ
千日前商店街の交差点
河野と待ち合わせてするりと大阪王将へ
一階奥にある2階への階段の窪みで座りにくそうな変な席
(聖地巡礼にどうぞ)
河野は奥、僕は手前に座る
緊張で食欲がない僕を横目に
DX何たらセットを頼んでいた
あいつはこの時からデラックスとか付く食い物が好きだった
女の趣味も乳がデカけりゃそれでいいと
難波の巨乳専門風俗「乳野家」に執心だっただけのことはあるがそれはまた別の話
バクバクと食いながらコンビ結成の打診
こちらとしては嬉しかったが、オラオラ感が凄かった
確かに二つ歳上で、その時の僕は
ワンレンボブが肩まで伸び、瓶底みたいな度のキツい眼鏡をした声の小さいガリガリ猫背野郎なので仕方なかった
程なくして養成所にコンビ結成を報告
「コンビ名は?」
と訊かれたが、名前はまだない
後日、決まったらと伝えた
それから初めてのネタ合わせの日時を決めて解散
したのだが…
実家から難波までの御堂筋線
これがどうにも乗れない
乗っても腹が痛くなる、息が詰まる
一駅降りては一息ついて
また乗っては一駅降りる
そもそも駅に向かうまでに相当な覚悟がいる
雨の降り頻る難波hatch、予定より確か7時間ほど遅刻していた
河野は幽白の雷禅みたいな雰囲気で待っていた
「どういうつもり?」
ごもっとも
ぐうの音も出ない
思えばあれが初ツッコミかもしれない
俺の障害とか鬱をこの時から分かろうとする気がなかった(12、3年経ってからは大分、理解してくれるようになった)
こんな奴が面白いネタを考えられるのか
不信感しかなかっただろう
この後も俺に延々と振り回されることになる
その日はダラダラと話した
何故、組もうと思ったのか
「西尾(前の相方さん)とは同級生で、考えることが似ててな
抜きん出るには限界やなと思ってん
で、西尾がずっとお前のこと褒めてたやろ?
せやから気になっててん」
この時からお笑いのこととなると雰囲気を一丁前に出す男だった
19歳の俺には何だか響いたのだ
俺に賭けてくれたのだと
男前やし、ツッコミも上手い(当時のNSC同期比)
そんな彼が期待を寄せてくれた
それだけで生きる理由になった
ネタ見せの授業では早いもの順で名前を書いていく
野村・河野(野村尚平、河野良祐)
と書いたのを見て
「楽しみやね、うふふ」
不敵に笑うその男は、コントを主戦場にしていたが
何故か授業で漫才の時だけスーツを着て来る
坊主にはラインが入っていて、物々しい雰囲気だがそれでも言葉遣いは妙に柔和でよく笑う
後の爆ノ介だ
「意外やったわ、コンポタ(河野の前コンビ)の解散!何で野村なん?」
他の同期が河野に訊いていた
「見た目気持ち悪いやん、こいつ
ほんで何か暗いし頭おかしいやろ?
バランス、バランス」
とハッキリ聞こえた
膝から崩れ落ちそうだった
えっ、ホンマはそんな理由?
「お前ら、コンビ名は?」
「まだです…」
「ふーん…」
あの講師がニヤニヤとしていた
ネタの内容は河野が持ってきた設定を膨らませたものだった
そう、面白いことを考える気力もなかったのだ
カレンダーの土日だけ色があるのはおかしい
他の曜日にも…みたいな設定
この前、デルマパンゲさんが同じ設定で面白い漫才をされていて
15年越しに河野が完敗しているのを想って一人で笑った
卒業公演が差し迫ったある日、NSCに呼び出された
能力別クラスの昇格の報せか、何かしら怒られるの二択しかない
怒られた
コンビ名の申請をまるっと忘れていた
あの拾い上げてくれたのとは別の講師で、
半グレみたいな風体の作家(自称)がいた
天竺鼠さん、鎌鼬さんの名付け親として有名で
その人から
「プリマ旦那かチルド連(レン)」と迫られ
消去法でプリマ旦那として授業に出ていた
(僕の前のコンビ「デロリ庵(アン)」を踏襲してくれたんだと思う)
「報告、来いって言うたよな」
めっちゃくちゃ絞られ、卒業公演に出れないかもしれないとされた
焦って全授業で遮二無二、漫才したお陰で
中級クラスと同じネタ時間(2分)を貰った
当時はキャラ漫才、コント漫才が全盛(baseよしもと)
しゃべくりなぞ誰も耳を貸してくれない
二つ上(28期)にいらっしゃった
「概念」さんというコンビ
ボケの光木さんが声が小さく猫背
髪もボッサボサなのにスーツはちゃんと着てる
色気の塊みたいな人だった
これだ!と思ったアホは丸ままパクった
ウケるはずがない
その後も迷走に次ぐ迷走
月一のオーディションに出ても受からない
逆立ちしたって強制終了
(当時のオーディションはゴングショー形式で、面白くないと判断されれば爆音で不合格音が鳴り響く仕様だった)
長居公園でのネタ合わせ
(河野は当時、実家の堺から
俺は我孫子から)
薄い水色の原チャ(ジョグ)に乗ってやって来る
時計台の下にあるベンチで、無言が何時間も続く
ネタをちゃんと書け、と言われて買った大学ノート
前の同級生コンビでは和気藹々と会話してネタを作っていた
ネタの書き方なんて分からない
徹夜までしたのに真っ白な大学ノート
「見せて」
「何も書けてない」
「えっ、めっちゃ時間あったやん」
「ごめん」
また一時間、無言が続く
河野がヘルメットを被る
「お前と組んだらもっと早く(baseに)上がれると思ったわ、頼むからちゃんとネタ書いて」
バイトの時間だからと走り去る
情けなくて一人でアホみたいに泣いた
ネタは出来ない、演っても出来立てで覚えられずネタを飛ばす
本当に酷かった
オーディションライブ当日
「物忘れ」という漫才
河野:最近、物忘れがさぁ
野村:若いのに大丈夫か、俺が対処法を…
という入りの漫才
baseよしもとの舞台袖
とにかく寒い(冷房がキツい)
緊張もありガタガタ震える
またネタを飛ばしたら
飛ばさなくてもウケるのか…
河野:どうもー、プリマ旦那です
お願いしますー
いやぁ、最近物忘れが激しくてな…
野村:…
河野:(ネタを飛ばしたのに気付いて完全に顔がキレてる)何やねん
野村:………何にも出てけぇへん
河野:お前が忘れるんかい!
何をやっても
どれだけ練習してもウケなかった
それやのに、こんなことがウケた
恥ずかしかった
笑われたのだ
逃げたら終わると思った
野村:終わりや、終わりや
大体な、月一本の出番でみんな1ヶ月
みっちり練習してここ立ってんねん
夜勤明けで思いついた漫才「物忘れ」
そんなええ加減な気持ちで出て来る奴
そらネタ飛ぶやろ、フラフラや今
おい、審査員
そこ座ってんねんやろ!
不合格音、鳴らせ!
思いつく本音をひたすら喋った
というか悪態をつきまくった
喋れば喋るほど笑いが起こる
河野も必死に食らいつく
だが一向に不合格音が鳴らない
作家が見せしめに意地悪していると思った
持ち時間の2分が10分にも1時間にも感じる
どう落とすねん、と河野が焦ってるのがわかった
物忘れ、物忘れ、物忘れ…
まぁ…みょうが食うたら、物忘れが激しなる言うて…
めちゃくちゃ変なこと言うた
脈略もへったくれもない
何の話やねん!もうええわ!
ありがとうございました
頭を下げる、まだ不合格音が鳴らない
勘弁してくれ
パパパパーン!
何でか合格音が鳴る
MCの天竺鼠さん
瀬下さんがおめでとう!
面白かったなー、漫才を忘れる漫才!
と言って出てくる
やっべ、そう映ってるのかとその時に分かった
調子を合わせたが歯切れも悪い
「川原がな、あれはマジで飛ばしてるって言うねん!」
「そんな訳ないやないですかー!」
「いや、あれはマジで飛ばしてましたね」
こっわ、見透かすなよコイツ
と思った
終わってからは審査員のダメ出しに並ぶ
「これまでこねくり回した設定が多かったけど、これぐらいシンプルでええねや」
「ですよね!いやー、僕もですね…」
ホンマに忘れてたとバレたら怒られると思って必要以上に喋った
ダメ出し部屋から出た途端
「調子、乗んなよ」
と河野に言われた
初合格の喜びよりも、またネタ飛ばしやがったコイツが勝っていたのだ
そりゃそうだ
NSC道場
卒業して3年目までの芸人がネタ披露するイベント
優勝すれば、baseよしもとの
オーディション決勝に飛び越し出場が出来る
コンビ結成から1年、芸歴も2年目になった
その頃はほんの少し安定してウケるようになった
二ヶ月連続で優勝、すなわち2回決勝に行ける
そのタイミングで、NSC道場の出場エントリーが
夜勤明けの早朝からあり思いっきり寝坊した
なんばパークスの下
どえらい空気
「どういうつもり?」
15年で何回、言われたやろう
「3ヶ月連続で決勝、行けるかもせん
今がチャンスやのにさぁ」
当時からねちねちうるさい
俺は言った
「あくまで決勝に行くチャンスを一回、無くしただけ
先月、先々月の2回のうち1回は確かにあかんかった
でも今月、勝ってbase入ったらええ話やん」
逆ギレも甚だしい
「じゃあ入れるネタあんの?」
読者の中にはそろそろ
「こいつ、何もせんとずっと何で偉そうなん?」
とお思いの方も居るだろう
根がそういう奴なのだ
MCが何だと努力し出したのはここ数年の話
戻る
僕は咄嗟に「ある」と言った
どんなんやねんと言われた時、
またあのネタを飛ばしたオーディションの時の様に血が滾るのが分かった
河野が笑い転げた
オーディション決勝
河野:アルバイトでさ、友達が来た時って気まずいよな
話してたら店長に怒られるし
野村:そんなん簡単やん
お前、友達として来て
河野:わかった
ここから野村のお家芸
形態模写だ
ダイコクドラッグの店員の雰囲気を再現
めっちゃウケる
友達の河野が話しかける
「ここでバイトしてんの?」
「ちゃう」
「ちゃうんかい!勝手に店入って品出しすんなや!」
揺れるぐらいウケた
このネタでABCの決勝にも出た
結成したてのモンスターエンジンさんに
ボコボコにされたが
暫くして、同期と呑んだ
「いやー、プリマは上手いことやってるからなぁ」
爆ノ介以外の同期から当時「面白い」と言われたことが無かった
上手いことやってる
器用、器用
俺らはホラ、そういうんじゃないから
時間がかかっても面白いことやってるから
全員、死◯んじまえと思った話はさておき
「昔、講師が言うてたもんな」
それは河野の解散を予見した講師の授業
アホな生徒が質問した
「今年は誰が売れそうですか?」
講師はキッパリ一組もおらんと言い放ったそうだ
続けて
「今年のボケの一位は野村、ツッコミの一位は河野やな
ここが組んだら分からん」
と
だから周りは組んだ時に驚いたと
そんなことを思ってくれてたなんてと
帰り道は弾むような気持ちで歩いた
「…良い話ですね!これでいきましょう!」
4年目ぐらい、仕事も徐々に増えたある日
先輩のトークライブのゲストで作家から
良い話をしてくださいと言われてこれを説明した
えらく気に入られた様子だった
「どっちが喋る?俺が今みたいな感じで言おか?」
「おぉ…」
「え、河野が話す?」
「いや…」
「え?」
知っていた
あいつは知っていたのだ
どれだけ同期や先輩、河野から嫌なことを言われても
あの講師が言ってくれた言葉だけを胸に続けて来た
河野はその話を耳にし、大して話したこともない俺にコンビ結成を持ちかけて来たのだ
映画「SAW」のラストみたいな
伏線が全て回収される音が聞こえた
今まで河野が言ってきた
「もっと早く上がれると思った」
は
「聞いてた話と違う」
という意味だったのだ
恐るべし河野ジグソー
舞台に上がってこれでもかとイジった
10年目も越えた頃、(まだ続くんかいとお思いの君、俺だってそろそろ終わりたい)
12月30日の寄席公演
何だか河野の様子がおかしい
進化するはずもない
進化できないタイプの奴だからだ
「ちょっといい?」
あいつのちょっといい?は
溜め込んだ嫌ごとを言う時にしか発動しない
エレベーター前で
「解散を考えてる」
と告げられた
でしょーね
最近、顔終わってたもんな
出番もまだあるし、ひとまず翌日のカウントダウンライブ前に話そうと別れた
大晦日の16時、日本橋のベローチェ
2階の窓近くの左側カウンター席に座る
(聖地巡礼にどうぞ)
「どないしたん」
一つ訊いたら湯水のように愚痴が溢れた
まとめると
・俺はとにかくM-1に出たい
・テレビにも出たい
・それやのにお前の態度がずっと悪い
・劇団も意味が分からん、辞めろ
・漫才だけに時間、使ってくれ
・もうお前とおんの、しんどい
・何がしたいんか分からん
・お前は頭がおかしい
・とにかくお前が嫌い
10年経ってようやく、本音が聞けた
周りにはええ顔して
呑みの席では俺のことを悪く言うのは避け
人前ではそれっぽい感謝を並べるだけの奴が
こうも人の悪口を言えるのかと思った
で、俺は端的に言った
10年前、二つ歳下の俺に
お前から頭を下げて組んでくれと言った
こいつは頭がおかしいから、
何かやるんじゃないかと俺に賭けたわけや
10年経って、「頭がおかしいから解散してくれ」
それは筋が通ってない
俺は何も変わってないぞ
面白いことがしたいだけや
ごちゃごちゃ考えて上手くいかんのを全部、俺のせいにして
最初の気持ちはどこ行ってん
辞めてどないする
とりあえずピンになる言うたな
お前みたいなやりたい事もなりたい自分もない奴が
とりあえずで食うてける世界ちゃうぞ、ナメんな
嫁子供どないすんねん
知り合いの社長、頼って焼肉屋で雇われるならまだ分かる
そんな無責任なことすんな
ギャン泣きしましたよね
ベローチェの2階で
後方の席にいた熱いお茶トニオが引いてた
で、カウントダウンライブ
エンディングでは
新年の運勢ランキングを発表
上位から順に呼ばれると解散
下位にいくほど帰りが遅くなるシステム
占い芸人のターザン(現、永福庵)と会う
咄嗟に俺の勘が冴え渡る
「俺めっちゃ上位で河野、悪いやろ」
「どうして分かったんですか…」
「順位、教えて」
「いや、それだけはダメです…!」
占い師プロ根性を見せるターザンを
先輩風でゆすりにゆすって聞き出した
案の定、俺は一桁
河野は最下位
「何で最下位なん、理由おせて」
「言う訳にはいきません、ご本人にしか…」
「仕方ないな…今、喫茶店で…」
ことの顛末を話した
目を丸くするターザン
そりゃそうだ、先輩の解散話なんて穏やかでない
「でも納得ですね、河野さんは来年…」
「…なるほどな、例えばさ
嘘つけとは俺も言いたくない
だから例えばその結果を、こういう言い回しに出来ん?」
「あ、それなら嘘がないので言えます!」
「よっしゃ、頼んだ」
ライブ終盤、次々に名前を呼ばれて帰っていく
舞台上で喚く河野
ついにその瞬間、最下位の発表
因みに帰っていいのに残って袖から見ていた
「何で最下位やねん!!!」
「河野さん、周りの人への感謝が足りないですね(この辺りはターザンの元々の鑑定結果)
あと…」
「まだあんの!?何や!」
「初心、忘れてませんか?」
客には気付かれていないが、完全に河野が固まったのを見届け
俺は後輩と神社へ呑みに行った
これでも、はしょったんだで
15年、話は山とある
これがまた何年と続くのか
近いうちスパッと終わるのか
ただもう、どの玉が飛んできても怖くない
一筋縄にはいかない俺らなんで
上手くいったことがない俺らなんで
器用なんてとんでもない
泥はすすった
そろそろ綺麗な水を掬いに行こうと思う
今日も湯冷めしちゃう
野村尚平
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